骨盤の歪み・脚長差・反り腰。18件の論文を元にたどり着いた個人的結論

「骨盤矯正」
「骨盤が歪んでいる」
「足の長さに左右差があるので骨盤矯正しましょう」
「腰痛は骨盤の歪みから来る」
「産後の骨盤矯正」

こういった単語や
フレーズをよく聞きますが
本当に骨盤は歪むのでしょうか。
また仮に歪む場合、
その歪みは矯正が必要なのでしょうか?
そもそも歪みとは何なのでしょうか。

少しだけ骨盤について勉強してみましょう!


■骨盤を形成しているもの

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骨盤正面図

骨盤を形成しているのは
▪仙骨
▪腸骨
▪恥骨
▪坐骨
▪尾骨
です。

ザックリ言うと、
中央にるある仙骨と左右にある腸骨の
3つの骨から構成されています。
真ん中の仙骨+左右の腸骨
です。

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■可動する骨盤

最初にほぼ結論ですが、
骨盤は基本的に歪まない!

と思ってよいでしょう。
「歪む=動く・変形する」
という事になりますが、
そもそも骨盤は基本動きません。
しかし、
全く動かないという訳でもありません。
→ここが厄介。。。(´;ω;`)

⇩解説

骨盤の中でも可動するのが
仙腸関節恥骨結合です。

※上記画像をご参照下さい

◎仙腸関節

関節面は滑膜性関節の為、
動きはありますが
靭帯により強く固定されています。

ですので
動くと言っても他の関節のように
何度も動く訳でも無ければ
多方向へ動く訳でもありません。

せいぜい動いても3~5㎜です。
(0.4~4.3°の可動性と言われる事が多い)
※所説ありますが、
最大で7㎜までは動くという意見もあれば
2~3㎜程度動くという意見もあれば
はたまた、
全く動かないという意見もあります。
この辺りは団体や先生によって
意見が分かれますね。
※年齢を重ねるにつれて
動かなくなると言う方が多い印象。

※7㎜は
左右のストライド(歩幅)が
前後で最大になった際に㎜
7㎜動くという意見です。

ただ!
先ほども記載した通り
強固な靭帯により動きを制限しているため、
あくまでも衝撃の吸収
骨盤帯の安定性維持の為の働きです。

一言で言うなら、
ガッチリ固定されているから
大きくは動かない。
ただ全く動かないという訳では無い』

というのが結論でしょう。

関連(引用)するデータは下記の通りです。

報告① 仙腸関節の荷重-変位挙動
JAミラー、 ABシュルツ、 GBアンダーソン
PMID: 3819915
DOI: 10.1002/jor.1100050112
新鮮死体(59~79 歳,8 体)の仙骨に 42N-m の荷重を加えた結果,前屈は1.31°,後屈は 1.94°,一方向への側屈が0.37°,一方向への回旋が 0.8°であった。

Load-displacement behavior of sacroiliac joints – PubMedWe measured the load-displacement behavior of both single andpubmed.ncbi.nlm.nih.gov

報告② 高齢者の仙腸関節の可動性:運動学的および放射線学的研究
ヴリーミング 1、 JP ヴァン・ウィンガーデン PFダイクストラ、 R・ストークアート CJ・スナイダース T・スティネン
新鮮死体(73~83 歳,4 体)の仙骨に 200N の荷重を加えた結果,前屈と後屈全体で 4°の可動性があった

Mobility in the sacroiliac joints in the elderly: a kinematic and radiological study – PubMedMovement in eight sacroiliac joints was measured in preparatipubmed.ncbi.nlm.nih.gov


報告③ ヒト仙腸関節の生体力学的モデリング
N・ジェン 1、 LGワトソン、 K・ヨンヒン
所属 拡大する
PMID: 9136197 DOI: 10.1007/BF02534.
新鮮女性死体の仙骨に 1000N の荷重を加えた結果,側方に 0.5 mm,前後 に 1.8 mm,上下に 1.5 mm の動きがあり,仙骨に 50N-m のモーメント荷重を加えた結果,前屈は 1.0°,後屈は 1.0°,一方向への側屈が 1.1°,一方 向への回旋が 1.6°であった.

Biomechanical modelling of the human sacroiliac joint – PubMedFrom a mechanical point of view, the human pelvis can be conspubmed.ncbi.nlm.nih.gov

報告④ 20歳から50歳までの健康なボランティアにおける仙腸関節の可動性
健常成人(平均 36 歳の男 性 15 名、平均 34 歳の女性 9 名)に対して、立位からの腰部最大屈曲を行わせた結果、前屈は 0.6°で 0.4 mm の移動距離があった。また片足立ちでは、前屈は 0.5°で 0.34 mm の移動距離があった

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/0268003395000034

◎恥骨結合

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軟骨で結合し
上下に靭帯で強く固定されています。
基本は「ほぼ動かない」
と思って良いですが、
妊娠時や出産時には動きます。

良く言う「出産後の骨盤調整」
ですがあれは基本無視で良いのかと思います。
確かに出産時や後には
恥骨結合が開きますが
数か月で回復(閉じる)されます。
1/300~3,000,000の確率で
1㎝以上開いたまま閉じないケースもあるそうで
この場合は整形外科へ行きましょう。
(稀ですが)

とある整形外科のサイトより
下記文言を引用させていただきます。

『産後の骨盤の回復は概ね3〜8ヶ月ほどで起こります。つまり勝手に3~8ヶ月程度で骨盤は柔らかい状態から回復します。ですのでたいていの方には骨盤矯正は必要ないと思われますし、そもそも矯正しようにもどう矯正したら良いのかを判断することはできません。』
引用:平井リハビリテーション 整形外科様

エビデンスからみた骨盤矯正の嘘、本当 – 平井リハビリテーション整形外科ブログ最近骨盤矯正という言葉をよく聞きます。産後の骨盤矯正も近年巷では流行っているそうです。でも骨盤って本当に歪むのhirai-seikei.com


■「骨盤が歪む」とは

このラインより上のエリアが無料で表示されます。

今回の記事を執筆するにあたり
私なりにかなり多くの情報を整理し
調べましたが、
とある共通点が見えてきました。

それは、
★「歪む」の定義が曖昧
★骨盤が強固かつ安定性が非常に高い
★骨盤(骨)そのものが歪む事は無い
★骨盤の高さに差がある場合は、周辺組織(筋肉や靭帯、皮膚、立ち方等)の影響(アンバランス等)で骨盤そのものに原因は無いという主張が多い
歪みと痛みの因果関係は薄い
★150例のご遺体全てにおいて男女共に骨盤の非対称があるという研究あり(そもそも皆左右非対称)

★「歪む=骨がズレる・変形する」と解釈すると、医学的には否定的なエビデンスが多い

The sacroiliac joint: an overview of its anatomy, function and potential clinical implications – PubMedThis article focuses on the (functional) anatomy and biomechapubmed.ncbi.nlm.nih.gov

仙腸関節:その解剖学、機能、そして潜在的な臨床的意義の概要

ヴリーミング1、 MDシュエンケ、 AT マシ、 JEカレイロ L・ダニールズ、 FHウィラード

所属 拡大するPMID: 22994881
PMCID: PMC3512279
DOI: 10.1111/j.1469-7580.2012.01564.x

骨盤形態の変動により骨盤前傾の特定が妨げられる可能性がある

Variation in pelvic morphology may prevent the identification of anterior pelvic tilt – PubMedPelvic tilt is often quantified using the angle between the hpubmed.ncbi.nlm.nih.gov

引用:骨盤形態の変動により骨盤前傾の特定が妨げられる可能性がある

この論文は
解剖学的基準位置に配置された30個の死体の骨盤を対象にASISとPSISの間の角度を両側から測定した結果、ASIS-PSIS の値の範囲は0~23度、平均角度は13度、標準偏差は5度であることが判明。骨盤ランドマークの非対称によりASIS-PSIS 傾斜では最大11度、名目高さでは16ミリメートルの左右差が生じた。
という事を記しています。

この論文から、
とある整骨院さんは
下記のように表現しています。

『体の非対称性や不規則性は自然で一般的であり、また、左右差があっても、それが必ずしも痛みや不調と直結するわけではありません。』
引用:べにばな整骨院様 公式HPより

「おっ! ここにも共通点!」
と感動しましたね(^^

これらの研究や各整形外科の先生方、
柔道整復師の先生方の意見を私なりに要約すると、
【骨盤に限らず人は元々左右非対称であるケースがほとんど。しかし、骨盤自体は強固な人体で固定され安定されている為、後天的に歪む事はかなり稀である。そして左右非対称の状態が腰痛と直結する訳では無い。結論、骨盤の左右非対称は矯正する必要が無い】

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■良く言われるフレーズ

骨盤が歪むと主張される場合のほとんどが、
「仙腸関節の歪み(仙腸関節障害)で
結果、骨盤や下肢の痛みに繋がります」

「足の長さが違うので骨盤が歪んでます」

「足の長さが違うので骨盤調整しましょう」

「反り腰なんで腰に負担がかかります」
と言われます。

しかし、
仙腸関節は
骨間仙腸靭帯、
後仙腸靭帯、
仙結節靭帯、
仙棘靭帯
等が付着し関節を支えています。

※骨盤の動きに伴い弛緩する。
実際は仙腸関節に付着する靭帯自体が
損傷したり、その周囲の筋緊張などにより
仙腸関節が硬くなったり
緩んだりする事で痛みが起こるとされています。
(炎症や、痛み、痺れ等)

ですので、
仙腸関節を含め、
骨盤が歪んで痛みやエラーが起こる訳では無く
あくまでその組織周辺のエラーである
(歪んでいる訳では無い)
事が多いとされています。

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■脚長差=骨盤の歪みなの?

先ほどの記載した通り
よくあるセールストークとして
「足の長さが違うので骨盤が歪んでいます。骨盤矯正しましょう。」

というもの。
仮に仰臥位で足の長さが違い
骨盤矯正系の施術を受けた後に
左右差が無くなったとします。
でもその直後に100メートルくらい歩いてみて下さい。
あるいは10回くらい
その場で軽くジャンプしてみて下さい。
一瞬で元に戻ります(笑)

シンプルに疑問ですが
脚長差の原因は骨盤なの?
正確には骨盤以外に原因は無いの?
足の長さが違うと何が問題なの?
と思います。

※そもそも統計学的に
人間は右足の方が長いと言われています。
陸上のトラックなどが右回りなのがその理由なんて良く言いますが。

よく仰臥位(仰向け)や伏臥位(うつ伏せ)
で判断する事が多いですが、
足の長さがズレている=骨盤
というのは何故なのでしょうか。

  • 左右の足関節の角度が違うかも?
  • 左右で下腿(スネ等)の捻じ差が違うのかも?
  • 膝が完全伸展できていないのでは?
  • 側弯症なのでは?(背骨の曲がり)

という事も考えられますよね。

◎脚長差の測定方法

純粋な足の長さ(大腿骨や脛骨)を測定するなら、
レントゲンが必要と言われています。
(大腿骨や脛骨の純粋な骨の長さを測れる)

他にも
ASIS(上前腸骨棘)~内果(うちくるぶし)
までの距離を測る方法や
ブロック法と言われる測定法がありますが、
レントゲン以外の測定方法だと
外的要因が含まれます。

その外的要因がまさに⇩

  • 左右の足関節の角度が違うかも?
  • 左右で下腿(スネ等)の捻じ差が違うのかも?
  • 膝が完全伸展できていないのでは?
  • 側弯症なのでは?(背骨の曲がり)

です。

つまり、
足の長さが違う訳では無く、
ただ足首や股関節の角度に差があっただけ
みたいな事が多いという事です。

そもそも、
前半でもお伝えした通り
足の長さが左右一緒である事の方が珍しい
という先生も多いです。

となると、
脚長差がある=痛みが出る・歪み
でも無ければ、
脚長差が無い=痛みが出ない・歪んでない
という訳では無い?
と疑問が出ます。

下記データで確認しましょう⇩


■脚長差と腰痛の関連性

◎脚長差の有無と腰痛の関連が無いとしたデータ

Does unequal leg length cause back pain? A case-control study – PubMedIn a case-control study, in which a specially designed questipubmed.ncbi.nlm.nih.gov

足の長さが不揃いと腰痛を引き起こしますか?ケースコントロール研究 – PubMed

1984年8月4日;2(8397):256-8.土井:10.1016 / S0140-6736(84)90300-3。PMID:6146810。

◎解剖学的および機能的な脚の長さの不平等

Anatomic and functional leg-length inequality: A review and recommendation for clinical decision-making. Part I, anatomic leg-length inequality: prevalence, magnitude, effects and clinical significance – PMCLeg-length inequality is most often divided into two groups:pmc.ncbi.nlm.nih.gov

解剖学的および機能的な脚の長さの不平等:臨床的意思決定のためのレビューと推奨事項。パートI、解剖学的脚の長さの不平等:有病率、大きさ、影響、臨床的意義

◎脚長差と腰痛の関係(まとめ)

『脚の長さの違いは、
約90%の人に見られ、
通常、その違いが20mmまでは臨床的に重要ではない』

『また、腰痛などの症状のある人とない人では、症状のある人の左右差の平均が5.1mm、症状のない人の平均が5.2mmと、二つのグループ間に統計的な差は無かった』

という結論!

こちらのべにばな整骨院様のサイトをご覧いただけると
より理解が深くなるかと思います!

脚の長さの違いは腰痛の原因ですか?脚の長さの違いは腰痛の原因ですか? | べにばな接骨院不安を安心に変えるコラム脚の長さの違いは腰痛の原因ですか? 「片方の脚よりもう片方の脚の方が短い」など、腰痛の…不安を安心benibana-sekkotsu.com


■反り腰と腰痛の関係

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こちらもべにばな整骨院様のサイトからの情報です!
めっちゃ分かりやすい!

反り腰と腰痛の関連があるのか
無いのかを調査した研究から!

◎腰痛の有無と腰椎の前弯(無関係データ)

腰痛患者27名と腰痛の無い患者19名
ボランティア10名を対象にMRIを使用して
腰椎の前弯との関連を調べた結果、
腰痛のある人、ない人の前弯に違いは見られなかった
と報告しています。

Lumbar lordosis: study of patients with and without low back pain – PubMedWe used magnetic resonance imaging (MRI) to assess lumbar lorpubmed.ncbi.nlm.nih.gov

腰椎前弯症:腰痛のある患者とない患者の研究

腰椎前弯症:腰痛のある患者とない患者の研究

VL マリー1、 AKディクソン、 W・ホリングワース H・ウィルソン TACドイル

所属 拡大するPMID: 12589669
DOI: 10.1002/ca.10114

◎健康な120人を調査した結果。。。(無関係データ)

健康な120名(男性65名、女性55名)
を対象に行われた研究結果では、
男性の85%、女性の75%が骨盤前傾、
男性の6%、女性の7%が骨盤後傾、
骨盤の傾斜が中立的だったのは
わずか男性9%、女性18%だけだったと。。。
このデータを見ると
男性の場合91%の人が骨盤傾斜が正常ではない事になります。
しかし、全男性の91%が腰痛なんて事ないですからね。

ただ、
これはちょっと意外でした。
中立的だったのが少数だった事はもちろんですが
それ以上に、男性の方が前傾位、
女性の方が後傾位というのは驚きです。
私の肌感覚的には完全に逆でしたので(+_+)

Assessment of the degree of pelvic tilt within a normal asymptomatic population – PubMedIn clinical practice the degree of pelvic tilt is commonly aspubmed.ncbi.nlm.nih.gov

正常無症状集団における骨盤傾斜度の評価

リー・ヘリントン1

所属 拡大するPMID: 21658988
DOI: 10.1016/j.math.2011.04.006

◎腰椎前弯での長時間立位姿勢(関係ありデータ)

この研究では、
長時間の立位姿勢中に
腰椎前弯角度が大きい人々が、
腰痛を発症するリスクが高い
ことが示されています。
具体的には、
腰痛を発症したグループは、
発症しなかったグループと比較して、
平均で4.4度大きな腰椎前弯角度を示しました
(95%信頼区間:0.9°~7.8°)。
また、腰椎前弯角度と最大痛みの間には
中程度の相関(r=0.46, p=0.02)が認められました。

Is lumbar lordosis related to low back pain development during prolonged standing? – PMCAn induced-pain paradigm has been used in back-healthy peoplepmc.ncbi.nlm.nih.gov

腰椎前弯は長時間立っているときに腰痛が発生することに関係がありますか?

クリストファー・J・ソレンセンa、バーバラ・J・ノートンa、ジャック・P・キャラハンb、チンティン・ファンa、リンダ・R・ヴァン・ディレンa著者情報
記事ノート
著作権とライセンス情報

PMCID: PMC4469524 NIHMSID: NIHMS655806 PMID: 25637464

◎反り腰と腰痛の関係(個人的結論)

これらのデータを見て分かったのは
「分からない」
と言う事(笑)

おそらく、
腰椎の伸展(反り腰)があるか無いか
だけで無く、体重のかかる位置(足底)や
呼吸の仕方、歩き方、活動量などでも
変わる為他の要因が大きく関わり
反り腰=腰痛
とは簡単に決めつける事は出来ないでしょう。


■まとめ

最後にまとめです。
今回の記事執筆にあたり、
複数の論文、データを調べ
かつ柔道整復師の知り合いにも
話を伺いました。

結果、、、、
★骨盤は歪まないであろう!
★脚長差も気にする必要は無いであろう!
★反り腰で腰痛リスクが上がる場合とそうでない場合がある。
★ただ仙腸関節が動くのかは意見が分かれる
★少なくとも産後の骨盤矯正が必要な人はかなり稀

という事が分かりました。

最後に、
私がいつも勉強させていただいている
トレーナーさんと全く同じ意見で運営している
整骨院さんがありましたので
共有いたします。

そもそも骨盤は歪まない?そもそも骨盤は歪まない? | べにばな接骨院不安を安心に変えるコラムそもそも骨盤は歪まない? 最近では、テレビや雑誌などで取り上げられることも多く、益々知…不安を安心benibana-sekkotsu.com

引用:べにばな整骨院様 HPより引用

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