小学6年生野球部が部活引退後にやるべき事。(中学への準備)

小学校6年生の夏〜秋。

少年野球最後の大会が終わり、
中学校への入学まで約半年。

この時期になると、
選手本人だけでなく保護者からも、
「中学で遅れないために毎日キャッチボールをした方がいい?」
「筋トレはもう始めても大丈夫?」
「走り込みをして体力をつけるべき?」
「身体が硬いからストレッチを増やした方がいい?」
「野球以外のスポーツをやる意味はある?」
といった相談を受けることがあります。

結論から言うと、
少年野球で蓄積した疲労や投球負荷を一度リセットしながら、中学以降に大きく伸びるための身体の土台を作ることが重要です!

技術練習だけでもない。
筋トレだけでもない。
ストレッチだけでもない。
この年代だからこそ、
休養・多様な運動・筋力・スピード・野球技術・睡眠・栄養
をバランスよく組み合わせることが重要になります。

この記事では、
小学校6年生が少年野球を引退してから
中学入学までの約半年間を
どのように過ごすべきなのか、
発育発達やトレーニング、
障害予防などの研究・ガイドラインを
もとに整理していきます。


■まずやる事

引退後、まずは肘と肩をしっかりと休めましょう。

「中学生になるまでに肩を作らなければ」
と毎日投げ続ける必要はありません。

投球動作は、肩や肘に同じ負荷が繰り返しかかる動作です。

小学生年代では野球肘などの投球障害が問題になりやすく、
投球数や年間を通した投球量、疲労管理が重要とされています。

そのため、少年野球の大会終了後は、
投球による肩肘への反復負荷から一度離れる期間
として非常に利用しやすいタイミングです。

ただし、肩肘を休ませている間にも、

  • 下半身を強くする
  • 速く走る
  • ジャンプする
  • 急停止する
  • 切り返す
  • バランスを取る
  • 打撃を練習する
  • 捕球動作を磨く
  • 他のスポーツをする

といったことはできます。

つまり、
ボールを投げる以外の事に時間を使いましょう。

むしろ普段の野球シーズンでは時間を使いにくい能力を伸ばせる絶好の期間です。


■土台作り

11〜12歳前後は、
身体も運動能力も大きく変化していく時期です。

この年代では、バランス、リズム、
身体の位置を把握する能力など、
いわゆる協調性・身体操作能力を発達させることが重要です。
さらに心肺機能や筋力も徐々に発達していきます。

一方で、骨や筋肉、腱などはまだ成長途中です。
しかも成長速度には大きな個人差があります。

同じ小学6年生でも、
すでに身長が急激に伸びている子と
これから成長スパートに入る子では、
身体の状態が全く違います。

そのため、
「小学6年生だから全員このトレーニングをこの回数やればいい」
という考え方は適切ではありません。
※子供に限らずですが。

大切なのは、
中学入学時に完成された選手を作ることではなく、
中学3年間で伸び続けられる身体を作ること。
です。


■半年間で優先したいこと

「技術かフィジカルか」の二択ではありません。

身体の成長を支える睡眠・栄養があり、
その上に筋力や身体操作能力があり、
さらに走る・跳ぶ・止まるといった能力があり、
その土台の上に野球技術があります。


◎ 最初に考えたいのは「投球量を減らすこと」

少年野球を引退すると、
「毎日キャッチボールくらいはした方がいいのでは?」
と考えるケースがありますが、
むしろ年間を通した投球負荷を一度下げることが重要です。

日本では、小学生の全力投球数について、
1日50球以内・週200球以内
という医学的な目安が示されてきました。

ただし、ここで注意したいのは、
「50球までは毎日投げていい」という意味ではない
ということです。

試合での投球以外にも、

  • キャッチボール
  • ブルペン
  • ノック
  • 遠投
  • 投手練習
  • 捕手からの返球

など、肩肘にかかる負荷は存在します。
重要なのは「試合で何球投げたか」だけではなく、
年間を通してどの程度投げているか、
疲労していないか、痛みが出ていないか
まで含めて考えることです。

特に大会終了直後は、
肩肘を休ませる期間として利用する方が合理的です。


◎筋トレはやるべき。ただし「重さ」より「動き」

「小学生が筋トレをすると身長が伸びなくなる」
という話を聞いたことがあるかもしれません。

しかし、適切な監督のもと、
年齢に合った内容で実施する
レジスタンストレーニングについては、
成長を妨げるという根拠は支持されていません。

むしろ、

  • 筋力
  • 骨への刺激
  • 身体操作能力
  • スポーツパフォーマンス

などへの好影響が期待されています。

ただし、小学6年生で目指したいのは、
重いバーベルを持ち上げることではありません。

優先したいのは、

  • しゃがむ
  • 片脚で支える
  • 股関節を使う
  • 押す
  • 引く
  • 体幹を安定させる
  • 正しく着地する

といった基本動作です。

例えば、

  • 自重スクワット
  • ボックススクワット
  • スプリットスクワット
  • リバースランジ
  • ヒップヒンジ
  • 腕立て伏せ
  • チューブロー
  • デッドバグ
  • プランク
  • 軽いキャリー

などから始められます。

重要なのは、
「何kg持てたか」ではなく「きれいに動けたか」
です。

フォームが安定してから、
少しずつ負荷や難易度を上げていきます。

週2回程度、毎回ほぼ全身を使う形でも十分でしょう。


◎「走る・跳ぶ・止まる」を伸ばす

この半年間で個人的に非常に優先したい能力が、

スピード・ジャンプ・減速・方向転換などの運動能力
です。

野球では、

  • 一歩目
  • 塁間のダッシュ
  • 打球への反応
  • 急停止
  • 捕球姿勢
  • 送球への切り替え

など、短時間で大きな力を出す場面が多くあります。

そのため、
ただ長時間走るだけでなく、
短時間で素早く身体を動かす能力
を経験させることが重要です。

例えば、

加速

10〜20mダッシュを3〜6本

減速

ダッシュして指定されたラインでピタッと止まる

★方向転換
サイドステップから左右へ切り返す
※膝の怪我予防にも最適

★ジャンプ
両脚ジャンプ→静かに着地

★片脚動作
片脚ホップ→バランスを崩さず静止

★反応
指導者の合図で左右・前後へスタート

などがあります。

ここでも重要なのは、
キツイトレーニングをする事が目的では無い事です。
10本、20本、30本と本数を増やしていき、
スピードが落ちてしまえば、
それは「速く走る練習」から「疲れる練習」
に変わってしまいます。

スピードトレーニングでは、
一本一本を速く。速さが落ちる前に終える。


◎ストレッチを工夫せよ

成長期の選手に柔軟性や関節可動域は重要です。

特に野球では、

  • 胸郭
  • 股関節
  • 足首

などの動きが投球や打撃に関係します。

しかし、
「ストレッチさえしていれば怪我を防げる」
というほど単純ではありません。

障害予防を考えるのであれば、

  • 筋力
  • バランス
  • 身体操作
  • 必要な関節可動域
  • ウォーミングアップ

などを総合的に考える必要があります。

そのため優先順位としては、
①筋力・動作・バランス

②必要な部位の可動性

③長時間の一律ストレッチ
くらいのイメージです。

「身体を柔らかくすること」
だけを半年間のトレーニングテーマにする必要はありません。


◎持久力=長距離の走り込みではない

中学野球というと、
「今のうちに走り込んでおいた方がいい」
と考える人もいるでしょう。

もちろん、持久力は重要です。

11〜12歳頃から心肺機能も発達していくため、
有酸素運動を取り入れること自体には意味があります。

ただし!
持久力を鍛える=毎日長距離を走る
ではありません。

例えば、

  • サッカー
  • バスケットボール
  • 水泳
  • 自転車
  • 鬼ごっこ
  • シャトル系ゲーム
  • 短時間のインターバル運動

などでも心肺機能を刺激できます。
特に成長期は膝や踵などに痛みが出ることもあります。
そのような時期に長時間のランニング量を増やすより、
身体への負担を分散しながら色々な運動を経験させる
方が適しているケースもあります。


◎他のスポーツをやるのもおすすめ

例えば、

★サッカー
加速、減速、方向転換、周囲を見る能力

★バスケットボール
ジャンプ、着地、反応、空間認知

★バドミントン
素早いフットワーク、反応

★水泳
全身運動、心肺機能

★体操
身体操作、支持、回転

★鬼ごっこ
判断、加速、減速、方向転換
※鬼ごっこはもっと小学生低学年からやっておく事をおススメします。

など、野球とは違った運動経験ができます。

もちろん、
「バスケをやれば野球が必ず上手くなる」
と証明されているわけではありません。

重要なのは、
野球では経験しにくい動きを経験すること
と、
同じ動作を一年中繰り返す状態から一度離れること
です。

オフシーズンは、
こうした多様な運動を経験するには非常に良いタイミングです。


◎睡眠は「練習より先」に確保する

どれだけ素晴らしいトレーニングをしても、
睡眠時間を削ってしまえば成長期の身体にとって理想的とは言えません。

小学生では一般的に、
1日9〜12時間程度
の睡眠が推奨されています。

中学生になると生活リズムも変化し、

  • 朝の登校時間
  • 部活動
  • 宿題

などで睡眠時間が短くなりやすくなります。

そのため小学校6年生の段階から、
「練習を何時間やるか」より先に「何時間寝るか」
を決めるくらいでも良いでしょう。

成長・疲労回復を考えると、
睡眠まで含めてトレーニング
です。


◎食事は「身体を大きくする」より「成長を邪魔しない」

この年代で注意したいのが、
「中学生になるから身体を大きくしなければ」
と焦りすぎることです。
体重を増やすことだけを目的に
大量の食事やサプリメントを摂らせる必要はありません。

基本になるのは通常の食事です。

毎食、

  • ご飯・パン・麺などの主食
  • 肉・魚・卵・大豆製品などの主菜
  • 野菜などの副菜
  • 牛乳・ヨーグルトなど
  • 果物

を組み合わせます。

練習から夕食まで時間が空く場合は、

  • おにぎり
  • バナナ
  • パン
  • 牛乳
  • ヨーグルト

などを補食として利用するのも良いでしょう。

タンパク質については
スポーツを行う成長期の選手で
体重1kgあたり1.2〜1.6g程度が
目安として示されることがありますが、
まずは通常の食事から必要量を摂ることを優先します。


■半年間を3つに分けて考える

では、実際にはどのような流れで進めればいいのでしょうか。

半年間を大きく3段階に分けると分かりやすくなります。


◎1〜2か月目|回復+身体の基礎作り

大会直後は、まず身体と気持ちをリフレッシュさせます。

★重点

  • 投球量を大幅に減らす
  • 睡眠・生活リズムを整える
  • 軽い全身筋力トレーニング
  • 基本動作
  • 軽いダッシュ
  • 打撃
  • 捕球
  • フットワーク
  • 他競技・遊び

いきなり「中学野球対策」を始める必要はありません。


◎3〜4か月目|身体能力を伸ばす

この時期は、

フィジカル作りに最も時間を使いやすい期間
と考えられます。

重点

  • 全身筋力
  • 10〜20mスプリント
  • ジャンプ
  • 着地
  • 加速・減速
  • 方向転換
  • 片脚動作
  • バランス
  • 打撃・守備
  • 他競技

筋トレもフォームが安定してきたら、
軽い負荷を少しずつ追加します。

メディシンボールなどを使った
パワー系トレーニングを段階的に導入する方法もあります。


◎5〜6か月目|野球へ徐々に戻す

中学入学が近づいてきたら、
少しずつ投球量を戻していきます。

いきなり100%に戻さずに

  • 投球頻度
  • 球数
  • 距離
  • 強度

を一気に増やさず、少しずつ上げていきます。

また投球量が増えた場合は、
筋トレ・ジャンプ・走り込みなど他の高強度トレーニングを少し減らすことも必要です。

練習をすべて上乗せするのではなく、


■心理面でも「野球から少し離れる」価値がある

半年間ずっと、
「もっと上手くならなければ」
「中学でレギュラーを取らなければ」
と追い込む必要はありません。

同じ練習を繰り返し続けると、

  • 飽き
  • やらされ感
  • モチベーション低下
  • 燃え尽き

につながる可能性があります。

そこでおすすめなのが、
結果よりプロセスを目標にすること。

例えば、

「レギュラーになる」

ではなく、

「今日は10mダッシュを全部同じフォームで走る」

「スクワットを10回きれいに行う」

「ゴロ捕球で一歩目を速くする」

など、自分でコントロールできる目標を設定します。

保護者や指導者も、
「もっとやれ」より、
「前よりここが良くなった」
という成長を評価する声かけを増やしたいところです。


■まとめ|中学入学時に完成している必要はない

小学校6年生の野球引退後から中学校入学まで。
この半年間は、非常に貴重な期間です。

しかし、
「半年間で中学生の身体を完成させる」
必要はありません。
中学1年生から3年生にかけても身体は成長します。
その先には高校野球もあります。

だからこそ、この時期に目指したいのは、
「入学時に一番球が速い選手」ではなく、
「中学3年間で伸び続けられる選手」
です。

最後に、この半年間で意識したいことを5つにまとめます。

  1. 肩肘を一度しっかり休ませる
  2. 全身筋力と「走る・跳ぶ・止まる」能力を伸ばす
  3. 投げる以外の野球技術も磨く
  4. 他競技・遊びを含めて様々な動きを経験する
  5. 睡眠・食事を確保し、最後に投球を段階的に戻す

半年後に、
痛みなく、以前より速く走れ、
強く動け、様々な動きを上手にコントロールできる身体になっていること。

それが、中学野球に向けた非常に良い準備ではないでしょうか。


■参考文献・参考ガイドライン

本記事は、発育期のトレーニング、
少年野球の障害予防、筋力トレーニング、
クロストレーニング、心理面などに関する情報を整理して作成しています。

  • 公益財団法人スポーツ安全協会「成長スパートに合わせた『段階別』トレーニング」
  • 全日本軟式野球連盟「連盟適用ルール」学童・少年部に関する項目
  • NSCAによる青少年期のレジスタンストレーニングに関する指針
  • Disport World「野球少年の筋トレ完全ガイド|成長期の安全なトレーニング」
  • BASEBALL KING「少年野球にも取り入れたい『クロストレーニング』」
  • むとう整形外科「野球肘の治療法|年齢・重症度別の効果的なアプローチ」
  • サカイク「燃え尽き症候群を防ぐには目標設定から見直すべき?」
  • Disport World「12週間トレーニング計画――基礎期→発展期→出力期」

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