「中学生にプロテインを飲ませても大丈夫ですか?」
スポーツをしている中学生の保護者から、
よく出てくる疑問の一つです。
「成長期だからプロテインは飲ませない方がいい」
「腎臓に負担がかかる」
「食事だけで十分」
「むしろ身体を大きくするために飲ませた方がいい」
さまざまな意見があります。
では、現在の研究やスポーツ栄養学では
どのように考えられているのでしょうか。
結論から言うと、
中学生アスリートがプロテインパウダーを
摂取すること自体を、一律に避ける必要はありません。
ただし、
「スポーツをしているからプロテインを飲む」
のではなく、
「食事で必要なタンパク質を確保できない場合に、不足分を補う」
という考え方が重要です。
■そもそも「プロテイン」とは何なのか?
プロテイン(protein)は日本語で「タンパク質」です。
市販されているプロテインパウダーの多くは、
牛乳由来のホエイやカゼイン、
大豆由来のソイなどからタンパク質を取り出し、
摂取しやすく加工したものです。
つまりプロテインは、飲んだだけで筋肉がつく
「筋肉増強剤」ではありません。
肉、魚、卵、牛乳、大豆製品などから
摂取しているタンパク質を、
手軽に補給できるようにした食品です。
この認識を最初に持っておくことが重要です。
■中学生アスリートはどのくらいタンパク質が必要?
成長期のアスリートは、
・身体そのものの成長
・筋肉や骨などの組織形成
・トレーニングからの回復
・スポーツへの適応
などに栄養を利用します。
若年アスリートの栄養についてまとめた
Sports Medicineのレビューでは、
十分なエネルギーを摂取している若年アスリートの場合、
1日約1.5g/kgのタンパク質摂取が実用的な目安として示されています。
参考:
Youth Athlete Development and Nutrition
Youth Athlete Development and Nutrition – Sports MedicineAdolescence (ages 13–18 years) is a period of significant grolink.springer.com
例えば、
体重40kg → 約60g/日
体重50kg → 約75g/日
体重60kg → 約90g/日
程度です。
ただし「この数字を必ず超えなければいけない」
という意味ではありません。
競技、練習量、成長段階、総摂取エネルギー
などによって必要量は変わります。
■大切なのは「1日何g」だけではない
もう一つ重要なのが、タンパク質を摂るタイミングです。
若年アスリートでは、1回に大量のタンパク質を摂取するよりも、1回約0.3g/kg程度を1日の中で分散して摂取する考え方が提案されています。
例えば体重50kgなら、
50kg × 0.3g = 約15g
です。
朝食ではほとんどタンパク質を食べず、夕食で大量に肉を食べるより、
朝食
↓
昼食
↓
練習前後の補食
↓
夕食
というように分散させる方が合理的です。
■中学生にプロテインを飲ませるメリットは?
最大のメリットは、
「必要なタンパク質を簡単に補えること」
です。
例えば中学生では、
・朝は食欲がなく十分食べられない
・学校から直接練習に行く
・部活動終了から夕食まで時間が空く
・遠征で十分な食事を用意できない
・練習量が多く食事だけでは必要量を確保しにくい
といったことがあります。
こうした状況なら、プロテインパウダーは非常に便利です。
水や牛乳に溶かすだけで、10~20g程度のタンパク質を簡単に補給できます。
したがって、
「プロテインを飲むこと」が目的なのではなく、
「必要量を確保するための手段の一つ」
と考えると分かりやすいでしょう。
■プロテインを飲めば筋肉や運動能力はさらに伸びる?
ここは注意が必要です。
すでに食事から必要なタンパク質を十分摂取できている中学生が、さらにプロテインを追加したからといって、筋肉や競技能力が大きく向上するとは限りません。
米国小児科学会(AAP)も、適切な食事によってタンパク質を十分摂取できている場合、追加のプロテインサプリメントによるパフォーマンス向上効果を支持する十分な根拠はないとしています。
参考:
American Academy of Pediatrics
Use of Performance-Enhancing Substances
「中学生になったからプロテインを飲ませよう」
ではなく、
「現在の食事を確認したらタンパク質が不足している。では不足分をどう補おうか?」
という順番で考えるべきです。
■2026年には興味深い研究も
最近では、思春期アスリートを対象としたプロテイン研究も出てきています。
2026年に発表された研究では、
平均15.6歳の男子サッカー選手22人を対象に、
ホエイプロテイン摂取の効果が調べられました。
プロテイン群は、
20g×1日2回=40g/日
のホエイプロテインを10週間摂取しています。
その結果、VO₂maxについては
プロテイン群でより大きな改善が確認されました。
一方、筋力、スプリント能力、
除脂肪量などすべての項目でプロテイン群が
明確に優れていたわけではありません。
参考:
PubMed
Effects of whey protein supplementation in adolescent soccer players
The effects of whey protein supplementation on athletic performance and body composition in adolescent soccer players: a randomized controlled trial – PubMedAlthough protein supplementation is a common sports nutritionpubmed.ncbi.nlm.nih.gov
対象者が22人という小規模な研究でもあるため、この研究だけから、
「中学生はプロテインを飲めば運動能力が上がる」
とは言えません。
しかし、若年アスリートに対するプロテイン摂取について研究が少しずつ進んでいる点は興味深いところです。
■デメリット① 食事の代わりにしてしまう
中学生へのプロテイン使用で、個人的に特に注意したいのがここです。
例えば練習後に、
「プロテインを飲んだから栄養補給は終了!」
としてしまう。
これはおすすめできません。
成長期に必要なのはタンパク質だけではありません。
炭水化物
脂質
カルシウム
鉄
ビタミンD
その他のビタミン・ミネラル
なども重要です。
特に思春期は骨形成にとって重要な時期です。
そのため場合によっては、
「プロテイン+水」
より、
「牛乳+バナナ+おにぎり」
の方が優秀な補食になることもあります。
■デメリット② 実はタンパク質ではなく「エネルギー不足」かもしれない
身体が大きくならない中学生に対して、
「プロテインをもっと飲ませよう」
と考えるケースがあります。
しかし、身体が大きくならない原因がタンパク質不足とは限りません。
むしろ、
1日の総摂取エネルギーが足りていない
可能性があります。
特に野球、サッカー、バスケットボールなど練習時間の長い競技では、消費するエネルギーも大きくなります。
十分なエネルギーを摂取できていなければ、摂取したタンパク質も身体づくりだけではなくエネルギー源として利用されます。
さらに成長期の慢性的な低エネルギー状態は、成長、骨、ホルモン、ケガなどにも関係します。
したがって、
「身体が大きくならない=プロテイン不足」
とは考えないことです。
ご飯などの炭水化物を含め、そもそも十分な量を食べているのかを確認する必要があります。
■デメリット③ サプリメントには「混入」の問題がある
プロテインについて考えるとき、もう一つ知っておきたいのが製品の品質です。
日本アンチ・ドーピング機構(JADA)は、サプリメントについて、ラベルに表示されていない物質が含まれている可能性があることを注意喚起しています。
参考:
JADA「アンチ・ドーピングとサプリメント」
https://www.playtruejapan.org/code/rule/supplement.html
過去には、14歳の米国重量挙げ選手がドーピング検査でオスタリン陽性となり、使用していたサプリメントの製造過程における汚染が問題となった事例もあります。
参考:
USADA
Realize That Safety Issues Exist
https://www.usada.org/substances/supplement-connect/realize-safety-issues-exist/
これは、
「ホエイプロテイン自体が危険」という話ではありません。
問題なのは、プロテインを含むサプリメント製品では、製造工程などによって意図しない物質が混入する可能性を完全にはゼロにできないことです。
将来的に全国大会など高い競技レベルを目指す選手なら、より慎重な製品選択が必要です。
NSF Certified for Sport
https://www.nsfsport.com/
Informed Sport
https://sport.wetestyoutrust.com/ja
などの第三者認証を確認する方法もあります。
ただし、第三者認証があってもリスクが完全にゼロになるわけではありません。
■「プロテインを飲むと腎臓に悪い」は本当?
保護者から非常によく聞かれる話です。
現時点では、
健康な中学生が適切な量のタンパク質を摂取すると、それだけで腎臓を悪くする
という強い科学的根拠はありません。
一方で、成長期の子どもにプロテインパウダーを長期間摂取させ続けた研究は成人ほど充実していません。
したがって、
「絶対安全」
とも、
「腎臓に悪いから絶対飲ませてはいけない」
とも言い切るべきではありません。
特に腎臓を含む持病がある場合は、自己判断せず医師等に確認する必要があります。
■中学生アスリートにプロテインを使うならどうする?
私なら次の順番で考えます。
① まず普段の食事を確認する
朝・昼・夜・補食で何をどのくらい食べているのか確認します。
↓
② 1日のタンパク質量を確認する
成長期アスリートなら、目安の一つとして約1.4~1.5g/kg/日程度を考えます。
↓
③ 食品から摂る
肉、魚、卵、牛乳、ヨーグルト、チーズ、大豆製品などを優先します。
↓
④ 3食だけではなく補食も利用する
練習量が多い選手では補食も重要です。
↓
⑤ それでも不足するならプロテインを利用する
例えば体重50kgの選手なら、1日約70~75gを一つの目安とします。
食事から60g程度摂れているのであれば、
不足している10~15g程度をプロテインで補う。
このような使い方なら非常に合理的です。
「製品に1回20gと書いてあるから必ず20g飲む」という必要はありません。
■まとめ:プロテインは「飲む・飲まない」ではなく「何のために使うか」
中学生アスリートへのプロテインについて、
「中学生だから危険」
「スポーツをしているから飲んだ方がいい」
という二択で考える必要はありません。
大切なのは、
①十分なエネルギーを摂る
②十分なタンパク質を摂る
③できるだけ食品から摂る
④不足する部分を必要に応じてプロテインで補う
という順番です。
日本スポーツ協会も、身体活動量の増加などによって食事だけでは必要量を満たせない状況では、サプリメントによる栄養補充を選択肢の一つとしています。
参考:
日本スポーツ協会「サプリメント利用・活用コンセンサス2024」
サプリメント利用・活用コンセンサスwww.japan-sports.or.jp
プロテインは魔法の食品ではありません。
しかし同時に、
「中学生だから絶対に飲んではいけない食品」でもありません。
食事だけでは必要量を確保するのが難しいときに、
「不足しているタンパク質を補うための便利な食品」
として利用する。
これが、現時点では最も現実的かつ科学的根拠に沿った付き合い方だと考えます。
